4-5

哀れ、自らの半生を掛けて築き上げた学園で、囚われてしまった真佐実。

もはや、理性もかなぐりすて、あらん限りに我が身の証明をまくし立てる。
そして、次第に熱が篭るその様は、身振り手振りを交える大仰なものとなるのだが、、、

そう大げさな動きをすればするほど、エロ衣装の大きく開いた胸元からは、たゆんたゆんと
こぼれ落ちそうな巨乳が白く波打ち、靡く栗色のロングヘアからは何とも言えぬ芳香が漂う。
そして、上気した頬は健康的にピンク色に染まり、まさに若々しさに輝く様を見せつけるかの様であり、
失礼ながら、御年5*才のハズの真佐実先生とは、だれが見ても信じられるはずがなかった。

そして、そのエロ女の熱弁に辟易し始めた警備員の耳元のインカムから、救いの声が流れ出す。
もはや、安堵のため息を隠すそうともしないその警備員は、女性の熱弁を遮ると、そそくさと
中座してしまった。

「ふぅっ、、、、あのぉ、、、ちょっと宜しいですか?これは私の手にはおえません。
 とりあえず、一番、納得出来る方をお呼びしたいので、少々お待ちください。」
「!?!?なっ!?、、ち、、ちょっと待ちなさいっ!!、まだ話は終わっていないのよっ!!
、、、ねぇっ、、ちょっとっ!!」
あしらわれたと気付いた真佐実は、思わず再び激昂し、その男の後を追おうとするのだが、その視線の先、
ガラス越しの通路に現れた人影に気付くと思わず立ち止まってしまう。

そう、そこには、真佐実の一人娘、最愛の我が子である、東山真由美が居たのである。
もちろん、あの病院へと拉致されるきっかけとなった、自宅での真由美との食事を忘れた訳ではない。
しかし、愛しい我が娘でありながらも、その心変わりを認めたくなく、それと向き合うかもしれない事に、
思わず内心の恐怖を抑えきれぬ真佐実であったのだ。

だが、その我が子を疑ってしまうと言う、母として、これ以上はない悲しみも次の瞬間には、一瞬の躊躇いと共に
あっさりと消えていってしまったのだ。

それはなぜか?

そう、真由美は一人ではなかったのだ。
なんと、真由美の背後から婦人警官が表れたではないか。しかも2人も。

『!?、、!!!、、あっ!?、、あぁっ!!、、ま、、真由美、、真由美ぃっ!!、、、、、』
その光景を目にした途端、真佐実の心に浮かぶのが安堵の気持ちであったとしても、誰が責められるだろう。
そして、やはり、自分がお腹を痛めて産んだ我が子を信じられぬ親がいるであろうか、、、、

そんな娘が、今の真佐実にとって縋るべき最後のものとして頼りたかった官憲の女性たちと一緒に現れたと言うことは、
おそらく、真由美も正気に戻り、たぶん全てを警察に話して保護を求めたに違いない、と思い込んでしまった真佐実。
『あぁ、もぉ、、大丈夫、、真由美、、』
そう、警察さえ乗り出してくれれば、、、、、、
もはや、何の心配もない。
おそらく、そぅ遠くないうちに、昭夫もそして佐和子も開放され、あの悪魔の様な少女、そして校長の山田女史も
含め、全てに法の下の審判が下されるのだ。

すると、ガラス越しにこちらを見た真由美と目が合ってしまった真佐実は思わず胸の中に暖かいものが込み上げるのを
抑えきれずに、つい笑みを浮かべてしまう。

すると、なぜだかそれに釣られて真由美も笑顔を浮かべるのであるが、それはなぜか少々引き攣ったかの様な
強ばった笑顔にしか見えぬものであった。

だが、これまでの真由美の言動を知り抜いている真佐実にとっては、それもある意味納得の行く物である。
『?、あぁっ、、真由美、、そんな顔しないで、、、いいのよ、、私は全く気にしていないわ、、、
 それよりも、これからはまた母娘仲良く、、、、?、、あ、、ら、、、?』
そう、実の母親である自分の目の前で、息子の昭夫と淫らな行為に及んだり、あまつさえ拉致にも協力までしてしまった事を
真由美が恥じていたのかと思った真佐実であり、そんな些細(?)な事、もはや自分は気にしていないつもりであった。

だが、なぜだかやや微妙な笑顔でのみ、それに応じた真由美は再び婦人警官に話し掛けると、一行は通路を通り過ぎて
別室へと向かっていってしまった。

『?、、!!、、、あぁ、、ちゃんと彼女達に説明してくれるのね、、、
 うふ、いいわよ、真由美、お母様はいくらでも待ちますわよ。』
真由美と笑顔を交わし合い(?)、すっかり安心してしまった真佐実は、もはや全く疑いもせず、
安堵のため息を漏らしながら内心でそう呟いた。


そして、暫しの後、隣室から現れた婦警が真佐実のいる部屋へと入ってきたのであるが、
その官憲らしい凛とした顔も、おそらくは真佐実そして真由美のあまりに悲惨な境遇に同情したのであろうか、
これ以上は無いと言うような気の毒そうな表情であった。

そして、やはり同じように辛そうな声で真佐実に声を掛ける婦警。
「、、西川真佐実、、さん、、、ですね、、、、ご家族がお隣でお待ちですので、、、どうぞこちらに、、、」
「!?!?、、!!!!、、、は、、はぃ、、はぃっ!!!!」
『あぁ、、やっぱり判ってくれたのね、真由美、、、ありがとう、、、』
婦警が自分の名前を呼んでくれた事に、文字通り心の底から安堵した真佐実は、それが真由美の説明の御陰であると
信じきり、感謝の言葉を内心で述べながら婦警に促されるまま別室へと移動させられていく。

そして、その隣室には勿論、真由美が自分を待ち構えており、その愛しい娘の姿に安堵した真佐実は、
思わず心の底からホッとして改めて声を掛ける。
「、、、、真由美、、、、」

そして、それに応じて真由美も自分の名を呼ぶのだが、、、、、、
「、、、、、さ、、、佐和子、、、、、、」

なぜだか、その名は、自分ではなく、この場には居ないはずの真由美の一人娘であり、真佐実の孫娘の名を呟く真由美。
そのあまりの自然な呼び掛けに、思わず佐和子までもがこの場へ来てたのかと思い、思わず背後を
振り向くのであるが、そこにはなぜだか先ほど以上に気の毒そうな表情の婦警が並んでいるだけであった。

「?、、え?、、真由美、、、佐和子、、、って、、来てるの?、、どこ?、、」
呼ばれながらも見当たらぬ孫娘を不思議がり、思わず真由美にそう問い直す真佐実。

だが、そう問われた真由美の言動は真佐実の想像を超えたものであった。
「、、、あぁ、、佐和子、、、可哀想な佐和子、、、、お母様よ、、、、判らないの、、本当に、判らないのね、、、」
そう小さく呟き、そっと目を伏せる前の真由美の視線は紛れもない自分自身を見つめていた、、、、、、、

『、、、?、、え、、、?、、、真由美、、、佐和子、、、って、、、、?、、??、、、???、、、』

そう内心で呟いた真佐実の胸の奥に、何かドス黒いものが沸き上がる不気味な感覚があった。
そう、、、それは、これまでにあの女性たちから受けてきた仕打ちが、文字通り児戯にしか思えぬ位に感じてしまう
言わば最悪の予感、、、、、この世の地獄、、、、、、

そのあまりにも恐ろしい予感が、真佐実の足を次第に震わせていく、、、、、
その世界が崩れていきそうな予感を必死に堪えるが、周囲の人々の視線、、、、
それは見るからに痛ましいものを見る様な視線であり、中にはそっと目を背けるものさえいた。

やがて、次第に血の気が引いていく真佐実は恐怖に揺れる瞳で周囲を見回して、部屋の片隅に小さな洗面台を見つける。

そして、、、、、、、
『、、、、見てはいけない、、、、見たら、、、もし、、この眼で見たら、、、、全てが終わってしまう、、、、』
そんな内心の恐怖の叫びを聞きながら、確認せずにはいられなかった真佐実は、その今にも萎えそうな足元でフラフラと
洗面台に近付いて、鏡を覗き込むのだが、、、、、、、

そう、、、、そこにいたのは、、、、、、紛れもない、、、、、真由美の一人娘、、、、東山佐和子、その人であった。

どこかで誰かが悲鳴を上げていた、、、、、、、、
鏡の中の美少女が悲鳴を上げていた、、、、、、、、

だが、、、それはなぜだか自分(?)であった、、、、、

私は、、、、、、、誰?、、、、、、


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