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明け方の都内を歩きづめ、早朝にようやく学園へと着いた真佐実。
あの自宅から拉致された日からいったい何日が経過してしまったのであろう。
だが、少しずつ学園へと近付き、周囲の街並みが見慣れた風景に代わっていくに連れ、
真佐実の高揚した精神も落ち着きを取り戻していく。

そして、懐かしい学園の姿を久々に見た途端、安堵のあまり、思わず涙ぐんでしまう真佐実である。
『あぁ、、やっと、、やっと、、戻れた、、、帰ってこれた、、、、
 でも、、、これから、、よ、、、いぃえ、、、ここからが肝心よ、、、見てらっしゃい、、、、』
そう内心で呟き、安堵のあまり緩みそうになる気力を自ら奮い起こす真佐実。

そう、、なんと言っても、今の真佐実の敵は、あの悪魔の様な少女たちだけではない、夢にも思わなかった
校長の山田女史もその一人なのである。

これは慎重に事を運ばねばならない。

そう改めて気を引き締めた真佐実は、用心深く学園の裏側にある目立たぬ通用門を目指す。
まずは、なんと言ってもこの衣装をなんとかしなければならない。

そう、今の真佐実は移動の際、上着代わりに着させられた白衣を、脱走のどさくさで置き去りにしてしまった為、
監禁され、リハビリやエステの際に着させられていた、セパレートの下着同然の衣装のままなのであった。

豊満すぎる胸元は深い谷間も露わに覗かせ、ボトムに至ってはローライズで上からは尻の割れ目が覗き、はたまた
下からはプルプルとナマ尻肉すらはみ出ていておまけにへそ出しと言う、まさに水着同然の衣装。
おまけに、勝手に染められた自慢のロングヘアはウェーブのかかった明るいライトブラウンの茶髪と来ては、
とても真面目な種類の女性とは見てもらえない。

ここまでの脱走、逃亡と極度の緊張を強いられてきた道のりでは、それほど気にもならなかった真佐実であるが、
懐かしい学園へと戻り、多少は緊張も緩んできて今、改めて自分の衣装を気にすると、さすがに赤面せざるを得ない。
まずは、衣装をなんとかしなければ、、、、

幸い、既に早番の職員は登校してるらしく、通用門の施錠は解かれていた。
周囲を伺いつつ、通用門を抜け、外界から学園に入った途端、真佐実の胸中になんとも言えぬ安心感が広がっていく。
そう、、ここは今は亡き夫と2人、まさに半生を掛けて築き上げてきた自分の城なのである。
『、、許さない、、絶対に許さないわ、、、、』
ホームに戻った安心感からか、次第に真佐実の脳裏にはふつふつと憤怒の思いすら湧き出してくる。

しかし、冷静にここまでの道のりで、考えてきた具体的なプランを改めて反芻する真佐実。
まずは、学内にある筈の自分の予備の衣装へ着替える、それから誰か、信頼出来る人へ説明をし、、、
などと、考えながら、通用門を抜けた真佐実には、通用門脇にある掲示板に目を向ける様な余裕が無かったのは
ある意味、当然と言えば当然であったのかもしれない。

だが、、、、、もし、そこに貼ってある掲示物に気付けいたなら、、、、気付けたなら、、、、、、
しかし、そんな事などまさかにも想像すらしなかった哀れな真佐実は、反撃の期待に胸を高まらせ、
校舎内へと向かうのであった。


だが、校舎に近付くに連れ、建物内には、こんな早朝にも拘わらず人の気配がするのである。
これでは、目指す理事長室へと着く前に、誰かに見つかってしまう。

出来ればこんな半裸の衣装で見つかりたくない真佐実は、やや進路を交え校庭脇にある講堂の裏を抜ける事にして、
そちらへと近付いていく。

すると、なぜだか講堂には校舎以上にややざわついた気配がするではないか。
そして、なぜかとてつもなく不穏な気配を感じた真佐実は、当初の目的から外れるのだが、つい気になって
講堂へと近付き、窓越しに中をそぉ〜っと伺って、、、、、、、

見てしまったのだ、、、、、、、

文字通り、我が目を疑う様な光景を、、、、、、

そう、確かに自分の人生の中で、それは何度か目にしたことはあるし、その中の最も忘れ得ぬものは、
在りし日の亡夫と哀しい別れをした時の光景でもあった。

そう、、今、講堂の壇上は、まさにその時を思い出したかの様に、数え切れぬ程のたくさんの美しい真っ白な花で
覆われてた、、、、

そして、その花の上には大きく引き伸ばされた、輝く様な笑顔の自分の写真、、、、、
更にその上には、一際大きな垂れ幕に大きく

  故 西川真佐実 理事長 学園葬
真佐実先生。本当にありがとうございました。

の言葉が、、、、、、、、、

そう、真佐実は気付かなったのだが、通用門脇の掲示板にも下記の内容が掲示してあったのだ。
  
故     西川真佐実理事長 学園葬
 学園葬  **時 〜 **時 
 送る会  **時 〜 **時

 葬儀委員長  校長 山田 令子
 喪  主      東山真由美

それに気付いたならば、、、、、、気付いていたならば、、、、、、

だが、もはや全ては遅すぎた様である。


目にしたものが、あまりにも信じられず、これまでの警戒心も忘れ、ふらふらと講堂内へと入って行ってしまう真佐実。
そして、衝撃のあまり、今にも崩れそうな足元のまま、ふらふらと壇上へと近付き、遂にはその真ん前まで歩き寄る。

そこに自分がいた、、、、女一人で学園の運営という苦難な道を歩みながらも、若者を導くと言う、崇高な理想に
少しでも近付くべく、満ち足りた日々に、限りない満足感を覚えていてかつての自分、、、、、
その輝く様な笑顔溢れる美貌の熟女、、、、、、
その黒い縁どりの写真、、、、

そのあまりにも衝撃的な光景に、文字通り茫然自失となってしまった真佐実の脳裏に、監禁状態で強制的に
リハビリをさせられた際に、無理やり言わされたセリフの数々が、なぜだか突然に蘇ってきた。

『(以前の)真佐実は死んだ、、、』『(昔の)真佐実はもういない、、、、』

確かに、復唱を拒否した際の折檻に怯え、しまいには自棄糞同然に絶叫してしまったのであるが、
それはあくまでも比喩的な意味だと思っていた。
「、、ち、、ちがう、、違うわ、、そんな、、そんなつもりで、、、」
それが、まさかにも現実になろうとは、、、、、
そう力なく、かつての自分の発言を否定する真佐実。

そんな不幸な美女に、更なる災いが襲い来る。
早朝巡回に回っていた警備員が講堂の開いたままのドアを不振に思い、中を確認するべく講堂内へと
入ってきたのだ。

すると、なにやら人影、それも髪の長い、見るからに若そうな女性が壇上の前に佇んでいるではないか。

今日がどのような日かをしっている警備員は、当初、敬愛する恩師の訃報に心を痛めた学園の女子生徒が、
一人、理事長とのお別れをしているかと、我が胸も痛めたのであったが、よく見ればその女性は、
いわゆるロン毛の茶髪であり、学園の校風から言っても、とても在校生には見えないタイプであった。

しかも、よくよく見れば、その衣装はまるで下着姿かと思うほどに、露出度の高いエロ衣装で、
乳房の谷間やへそ、更にはナマ尻すら剥き出しと言う、正気を疑う様な格好なのである。

しかし、常識人であったその警備員は、厳粛であるべきこの日に、揉め事は出来れば起こしたくないし、
起きても欲しくなかった。

それで、なんとかひねり出した解釈が、
かつての理事長の教え子が、訃報に驚き、身なりを気にする余裕もなく、かつての母校を訪れた?
と言う、かなり無理やりなものであった。

しかし、なんとか穏便に済ませたい一心の警備員が、その不審な女性へと声を掛けたのであるが、、、
「あぁ〜〜、、、もしもし、、、ちょっと宜しいですか?」
だが、そんな警備員の配慮は、当の女性にとって全く無意味な事だった様である。

「!!!!、、これは、、、これはっ!!、、、これは、いったいどう言う事なのよぉぉ〜〜〜っっ!!!!」
声を掛けられたと気付いたその女性は、なぜだかいきなりこちらに振り向きざまにそう絶叫したすると、
なんと突然その警備員に激しく詰め寄って来たではないか。
それは、文字通り、食ってかかるとの表現以外に表し様の無い動作であり、その鬼々迫る様は、職務として、
多少、手荒な来訪者(?)の対応すら軽く対応する警備員すら思わず、たじろぐほどの迫力であった。

そして、身の危険を感じた警備員は当然の如く無線で応援を呼び、その意味不明な絶叫を繰り返す
露出美女が取り押さえられるまで、それほどの時間が掛からなかったには言うまでもないことであった。

そして、本来であれば、そのまま警察官を呼び、お引渡しなのであるが、その美女の発言内容があまりにも
アレと言えばアレなので、とりあえず別室に確保となったこともまた、言うまでもないことであった。

ちなみに、そのアレな発言の幾つかを下記に示す。

「私が判らないのっ!!、理事長の西川真佐実よっ。」
「悪い冗談は止めなさい。死んで何かいないわよっ!!、私よ、真佐実よっ!!」
「なんで、判らないのっ!!真佐実なのよっ!!帰ってきたのよっ!!!!」

そんなセリフをどう見ても20代そこそこのエロ衣装で乳房やナマ尻を露出した茶髪のロン毛女が大絶叫するのだ、、、、

およそ、信じろ。と言う方が無理というものであった。


そして、確保された後、真佐実は真の絶望を知る事となる。

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