7-1 終わりの始まり
『、いったい、、いったい、どう言うことなの、、、どうなっているの、、、なんで、、なんで、、、、、、』
少女たちは未だ熱弁を奮い、則子を擁護し少年を非難している様であったが、もはやそんな言葉のカケラも
真佐美の耳には届いていなかった。
自分に夢中になっていた(とばかり思っていた)少年は、なんと、その間に少女とも身体を重ねていたのだ。
もちろん、それを非難する道理は真佐美には全く無い。
誰よりも、『我慢が出来なかったらシても良い』と言ったのは、真佐美ではないか。
しかし、そんな事はもはや真佐美の脳裏からはとうの昔に消えうせていた。
どころか、知らされた事実のあまりの内容に、真っ白となってしまった真佐美の意識。
だが、それも今の真佐美にとってはある意味、幸せであったのかもしれない。
意識が真っ白となってしまった真佐美を他所に、友人の猥談で盛り上がる少女たちの内容は止まる事を
知らなかった。
「だから、私、則子に言ったんですよぉ、それってれっきとした『二股』じゃないの、別れちゃえば。って。」
「そしたら、則子はカレから、『あんな女、身体だけ』って言ってくれたって、結構、満更でもないふうで。」
「あんた、それでいぃのっ?って聞いても『大人だって風俗に行くしぃ、、、、』とか言うんですよぉ、」
「えぇーーっ、信じらんないなぁ、、、私なら、、、ちょっと、ヒィちゃうかなぁ、、、」
「わたしもぉ、、、ねぇ、理事長先生はどう思いますぅ、相手が居るのに『風俗』行くカレってぇ?」
そう言って真佐美に質問を振る少女もいたが、もはや真佐美はぎこちない笑みを浮かべ、曖昧な答えを
機械的に返すのが精一杯で、心ここにあらずなのは明白であった。
「あっ、でも、大丈夫みたいよ、則子に聞いたら、もうカレも『バァさんはしつこい』って言ってたって。」
「!?、、、あ、、あなたたち、、ご、ごめんなさい、ち、ちょっと資料を纏めなくちゃならなかったの、、」
突然、時計を見て、慌て出した真佐美に追い立てられるかの様に理事長室から出される少女たち。
だが、言いたい事を言ってスッキリしたのか、そんな理事長の豹変もあまりに気にせずにあっさりと
解散してしまった。
だが、一人残された真佐美はそれどころでは無かったのは言うまでもない。
屈辱、、、、憤慨、、、、激怒、、、、、、、、そして、、、嫉妬
そんな人間の持つ、負の感情の全てが今や、真佐美の脳裏を占め、荒れ狂い、渦巻いていたのだ。
『、、ど、、どう、言うこと、、、どう言うことよ、、、どう言う事なのよ、、、、、』
、、、、、、、もちろん、元々の恋人同士であった若い2人が元の鞘に戻っただけである。
ほんらい、それこそが真佐美の介入した理由であり、それ以上の干渉など無用千万、意味不明は明白である。
、、、、等とつい先日までの真佐美であれば、そして他人事であれば、そうしたり顔で述べたであろうが、、、
もはや、そんな理性的(?)な思考など、脳裏から地平の彼方まで飛び去ってしまっている今の真佐美。
『あ、、、あんなに、、あんなにシてあげたのに、、あんなコトまでシてあげたのに、、、、、』
真佐美の脳裏を卑猥な姿で若者と絡まる自分の姿態が埋め尽くす。
自分から等したことすらない、性器への口を使っての愛撫、いわゆるフェラチオ、、、、
いや、それどころか肛門、アナルセックスまでサせてあげたではないか、、、、
それが、その間に、少女とも身体を重ねていただなんて、、、、、、、
しかも、、、、、
『、、、か、身体だけ、、、、、ふ、、風俗ですって、、、、な、なんて、、、、なんて、ひどい、、』
よりにもよって、自分は風俗嬢(?)、いわゆるソープやヘルスの女達と同じであるとまで言われたのだ、、、
さらに、、、、、、
『バァさん、、バァさん、、だなんて、、、、あ、あんなに、、あんなに『キレイ』とか『ステキ』とか、、』
、、、、、、もはやどうしようもない、、、、、、、
例え、いかに若く見えていようが、たしかにそれをあからさまに言う事は失礼であるのは当然であるが、、、、
どう考えても50代は若者とは決して言えぬし、そろそろ中年と言うのも厳しいのが現実ではないか、、、
まして、あれだけ若々しい少年の肉体が与えてくれる愉悦の一時、極上の快楽に溺れ、まさに獣の如く
獣欲に狂っていたのは自分からなのだ、、、、、、
それを今だ、『シてあげた』『サせてあげた』などの事実を無視した上から目線で語るなど、
それに『まぁ、奥様、お若く見えますわぁっ』『んまぁ、、**歳!?とてもそんなには見えませんわぁ、、』
と、同列(?)な台詞に過ぎないものを真に受けるなど、、、、、、
まさにダメな大人の典型ではないか、、、、、、
ほんの少し前まで、学園をあらゆる意味で取り仕切り、先導していた理性に満ち溢れた高級セレブの真佐美。
それが、これほどまでに堕ちてしまうとは、、、、、、、
もはや理性よりも感情、頭脳よりも子宮(?)でモノを考え始めてしまった様な真佐美であった。
だが、、、とりあえず自分は少年にとり、理事長先生の友人の『マサミ』である。
いきなり彼を呼び出して詰問することが出来ぬ程度の理性は(辛うじて)脳裏に残っていた様である。
『、、わ、判ったわ、、よぉーっく、判ったわ、、いいわよ、、だったら、、、もぅ、イィわよ、、、』
あくまでも、『サせてあげている』の立場でしか自分を判断出来ぬ位に、己を見失ってしまっている
真佐美が選んだのは、結局のところ、実に消極的な抵抗でしかなかった。
基本、こちらからの『お誘い』が無ければ、少年からは対応出来ない(筈なのだ)。
ならば、これからは一切、こちらから連絡をしないで置いてやるのだ。
どうせ、性欲を持て余すあの絶倫少年のこと。
おそらく、ほんの数日で泣きの入ったメールを送ってくるのに間違いない。
『うふふ、、その時に、、、見てなさいよぉ、、、、』
自分のシナリオを疑いもしない真佐美は、そうやって自分が既に暗黒面(?)に堕ちた事にも気付かずに
ほくそ笑んでいる。
そう、、、、、そして破滅への扉がまた一つ開いたのを、今だ理解せぬ哀れな真佐美であった、、、、、
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