新たな生贄-01-01




結局のところ、『西川真佐美物語』の掲載は却下されてしまった。
担当記者である則子の記事があまりにも主観的で思い込みに満ちたものであり、真佐美自身が大幅な校正をし、
簡単な履歴紹介に止めてしまったからだ。

しかし、聞いてしまった以上、もはや話さずにはいられないのが女子高生。
そんな口コミで広まる話により、ファンクラブさえ出来る人気となってしまった理事長先生であった。

そして、真佐美とて学校経営の携わる身であり、若者に興味が無いはずもない。
いつしか、昼食時や放課後の校内のカフェテリアでは、理事長先生と同席し、歓談をする女子高生の
一団が発生していた。

そんな中、ある女子高生が唐突に質問をする。
「あ、、あの、、私、こないだ『*****』に行ったんですけど、、ひょっとして理事長先生も会員に
 なってませんか?」
とある有名スポーツジムの名前を聞き、ざわめく一同。
そこはいわゆる『セレブご用達』で有名な場所であり、スポーツジムだけでなくエステやコスメなども
揃ったスポーツクラブとして名をはせている場所だったのである。

「え?、、ひょっとして見られちゃった?、、うーーん、、ちょっと最近太っちゃって、それで、ね、、」
「えぇーっ、、そんなことないですよぉ、だってプールで見たけど、ぜんぜんだったじゃないですかぁっ!!」
「あらっ?そんなトコまで見られてたの?オバさん赤くなっちゃうわっ。」
「えぇーー、、いぃなぁ、、ねぇ、教えて教えて、理事長先生の水着姿。」

知られざるプライベートの一端に色めき立つ一同。
偶然にも眼福に預かったその生徒は、真佐美の制止も無視して語り出してしまった。
「ち、、ちょっと、ヤメてちょうだいっ!!」
「うんっ、理事長先生って着痩せするタイプなんですねぇ、、あんな立派な、、、、羨ましい、、、、」
「それで確か、お子さんだっているんですよねぇ、、それであんなに括れてるなんて、、、」

その時の映像を脳裏で反復するその生徒。
たしかにその映像は、今のほっそりとしたスーツ姿からは信じられぬ程に豊かなバストと十分に括れた
ウェスト、悩ましいヒップへのボディラインを見せる、十分に魅力的な熟女の水着姿であったのだ。

「うんっ、正直、まだ十分イケてます、、理事長先生っ!!」
なにを納得したのか、妙な太鼓判を押す、その生徒に苦笑しながらもクギを差す真佐美。
「うーん、恥ずかしいトコ見られちゃったわねぇ、、、でも、絶対他では喋らないでね。」
「ハィッ、それはもぉ、、」
憧れの美女と秘密(?)を共有できた事に、嬉しそうに返事をするその生徒。

だが、収まらないのは他の生徒たちであった。
「えぇーーっ、ずるっーぃっ!!私達も見たぁーぃっ!!」
「そぉだ、理事長先生、今度のプールの授業、ぜひ参加して下さいよっ!!」
「あっ、それ、イィッ」「ねっ、そぅでしょ、ねぇ、先生っ!!」

話の流れで、まさにトンでもない事になりそうな展開を、流石にすかさず却下する真佐美。
「ダメッ、絶対ダメッ、そんなコト出来る訳ないでしょぅっ!!」
「えぇーーっ、、ダメなんですかあっ、、つまんなぁーぃ、、」
「でも、プールって言えば、さぁ、、」
プールの授業という言葉を聞いた途端、急に盛り上がる女子高生達。

「あぁーーっ、ヤバいよ、お腹ぁ、、」
「うっそぉっ、私、太ももぉ、、」
「私の二の腕の方がもっとヤバいってぇ、、」

至急ダイエットすべき。との結論に走る一同であったが、それをやんわりと窘める真佐美。
「こらこら、何言ってるの、、貴方達、、若いって言うだけで十分なのよ、、、」
そう窘めながらも、真佐美のその目は周囲の女子高生の姿態に向けられ、羨望の念を禁じ得ない。

まさにハチ切れんばかりの瑞々しい若さ溢れるその姿態、、、、
垂れも緩みも微塵も感じさせぬであろう、そのバスト、ウェスト、ヒップ、、、
いかに、エステやコスメなどで手間暇かけても、もはや二度と戻らぬ若い身体、、、、

正直なところ、生徒に見られてしまったプールでの水着、、いや、更にバラしてしまえば、
今、現在でも着用している補正下着や補正水着などがなければ、、、、
1人、浴室で自ら裸身を見ては、次第に緩つつある、己の肉体にため息が出てしまう。

まして、素肌の張りなど、周囲の10代の少女達の輝きに比べれば、、、
実際、こうしてこの場で女子高生たちと一緒に座っている事さえ、教職にある身、そして場所が
学校内などでなければ、正直、勘弁して欲しいと思う事さえあるのだ。
そう、それは、女としての性、、、いや、業の様なものかもしれない、、、、

『ハッ、いけない、いったい、何を考えているの、そんなコト、当たり前じゃないの、、それより、、』
ふと、あまりに浅ましい自身の考えに気付き、あわててそれを打ち消す真佐美。
そして、そんな内面の思いを否定するかの様に、正論をブチ始める。

「それに今、貴方達はまだ、身体を作っているとっても大切な時期なの、、」
「今の時期はちゃんと食べて、それで運動する、、、」
「そぅじゃないと、将来、結婚して赤ちゃんを作る時に、、」

だが、年長者からの常識豊かな正論も、暴走する(?)女子高生達には中々通じない。
「えぇーっ、私、結婚なんかしませんっ、私はキャリアに生きるのよっ!!」
「えっ、私、結婚、平気だよ、って言うか、早く結婚したぁーぃ、そして一生、専業主婦。」
「ちょっと、それ、楽したいだけじゃんっ、、」「いぃーじゃん、どうせ不況なんだしぃ、、」
「あっ、それ、ラクでイィかもぉ、、」「でっしょぉぉ、、やぁーっぱ、ラクが一番よねぇ、、」

さすがにその結論だけは首肯し得ず、異論を唱える真佐美。
「うぅーーーんっ、ちょっとそれは賛成しかねるかなぁ、、」
「やっぱり女性もある程度、ちょっと生々しい言い方でゴメンなさいね、、自分で稼げた方が良いと思うの。」
「だって、何があるか判らないのが人生なんだし、、、、」
「でも、やっぱり、出来れば一度くらい、結婚、出産も悪くないと思うわよ、せっかく女に産まれたんだから」

無難にまとめた真佐美であったが、未だやや異論がありげな女子高生達。
そんな微妙な空気を察して、早々に解散を宣言する理事長先生であった。

「はぃ、今日はこの辺でおしまい、おしまい、、、ほら、もぅ下校の時間よ、、、」

『はぁーーっ、、』『先生、さよならぁ、、、』
そんな三々五々に解散していく彼女たちを見ながら、内心ため息を禁じ得ない真佐美。
『うぅーーーんん、、あれが今の考え方なのねぇ、、、』

たしかに自分たちの頃から、いわゆる女性運動の様なものは色々あったが、それらを見てきた真佐美にとり、
あぁもあからさまに女性であることを逆手にとっての結婚願望は、ちょっと違和感があった。

しかし、それを諭していく事こそ、教育者の使命であると思い直し、再び理事長室へ戻る真佐美であったが,,,,

「あっ、理事長先生、、、さよならっ、、、」
「あら、、あなたはこの間の、、、、田中君ね、、はぃ、さようなら、、」

廊下ですれ違い、あいさつをする男子生徒がいたのだが、それがこの間の『不純異性交遊』騒ぎの張本人で
ある事に気付くと、軽く名前を呼んであいさつを返した、、、、だけなのだが、、、、

(彼女はいたのだが)美貌の熟女と個室で面談し、ましては『セックス』だなどと言われてしまった
男子高校生は、それだけでパブロフの犬の如く、あからさまな反応を示してしまう。

突然に真っ赤になって目を逸らした男子高校生に、さすが年の功、ピンツと来た真佐美は、先程までの
討論(?)で高揚した気持ちもあり、すかさず左右を見て、人気が無いのを確認すると、
思わずその少年に近寄り、その耳元で、、、、、
「ちゃんと、我慢してるようね、、、エライぞ、、さっすが、男の子っ!!」
そう囁いたのだ。

そして、すばやく身を翻し、離れると、まさに全く何も無かったかの様に再び挨拶して、その場を去る真佐美。
「じゃぁねぇ、、田中君、さよなら、、」

だが、当の『田中君』はそれどころではなかった。
突然に目の前の美女が自分に近寄り、、、、それも吐息さえ感じられる程の近くに近づきながら、
その耳元で囁いたのだ、、、、

そのあまりにも甘い香りに包まれながら、耳元に熱い吐息を感じてしまった男子高校生は、もはや遠目にも
ハッキリと判る程に学生ズボンの股間を膨らませ、その美女が去った後も、いつまでもぼうぜんと
立ち尽くしてしまったのだ。

そして、、、、、、、
その美熟女と男子高校生のイケない瞬間、、、、、
それを物陰で見ていた女子高生が則子ちゃんであったのは言うまでもない事であった、、、、、



だが、哀しい事に、そんな真佐美のはしゃぎ様もその日限りであったのだ。


『、、、、そんな馬鹿な、、ありえないわ、、、絶対にありえないコトよ、、、、』
1人、自宅のリビングでぼうぜんとつぶやく真佐美。

久しぶりに真由美の家に電話しても、何回掛けてもつながらない。
ふと、思いつき、親戚と言う事で佐和子達の通う学園に連絡したところ、なんと姉弟揃って退学したとのこと。
何かの間違いではないかと聞き直せば、『あんな家族』とまさに耳を疑う様な扱いなのだ。
それでもと食い下がって、しつこく事情を聞くと、、、、、

まさに口にするどころか、耳にする事さえ汚らわしい数々の行為を述べられてしまったのだ、、、、、
母親である自分が言うのなんであるが、主婦でありながら、『貞淑』と言う表現がピッタリな愛娘、真由美。
若々しい凜とした雰囲気が我が孫ながら誇らしい佐和子。そして息子のいなかった自分にとって初めての
男子である孫、昭夫。

そんな自慢の娘家族が、、、まさか、、、、、

とにかく、電話だけではとても信じられぬ。と食い下がり、会って話を聞きたい。と頼み込んだとこ、幸い、
なんとか相手も了承してくれ、翌日夕刻に、その学校を訪問する約束まで取り付けた真佐美であった。


『、、、あら、、、珍しいタイプの人ね、、、、、、』
まじめに勉学に勤しむ美人女子高生、和美が放課後、帰宅の途につこうとしたところ、見慣れぬ高級車が
来訪者用の駐車場へ入るのを確認し、訝しんでいた。

その風体はかなりの高級そうなスーツを纏った有閑マダムと見えなくも無いが、凜とした風情がイカにも
『出きる女性』といった雰囲気であり、おそらく学校関係者、それもかなり上位者らしいのだが、それが
運転手も無しに1人で運転してくる、おまけに車を降りた後もどこか人目を避ける様な感じなのだ。

そして、なにより、どこかで見た様な雰囲気、、、、、、、、
『、、、、ふーーーん、、、、ちょっと、、、、なにかなぁ、、、、』
そして、携帯を取り出し、親友、由佳へと連絡を取る和美であった。


『、、、、、、、!?、、、、!!、、、、、』
『、、、、、*****、、、、、*****』
『、、、、、、!!、、、、、、??、、、、』
数刻後、応接室の外、植え込みに隠れ、変質者(?)よろしく室内の会話に聞き耳をたてる女子高生コンビがいた。
最初は中々会話が聞き取れなく、やきもきした2人であったが、次第にそれも杞憂となる。

会話自体のテンションが上がり、聞き取りに全く問題ない程になってきたのである。
そして、次第に露わになる美貌の訪問者の正体、、、、、

なんと、かの麗人はあの佐和子達の母、真由美の実母であったのである。
多少、トウはいってはいたのだが、まさかにも真由美の母、佐和子達の祖母であるとは思えぬほどの若々しさに
思わず、室内を覗き見る2人。

どうりで見た感じの雰囲気であったわけだ、、、、、
「ふぅーーーん、、、失踪した娘家族の行方を調べにわざわざ孫の通う学校まで来たんだぁ、、、、」
「、、、ねぇねぇ、、でも、さっすが真由美のママだけあるわよねぇ、、、スッゴク若いわぁ、、、、」
「、、、ふんんっ、、だったら、どう計算しても50過ぎのババァじゃない、、、イィ年して、、
 若作りしちゃって、、見ててイタいってぇの、、、」
Sっ気のある由佳がその瞳を爛々と輝かせながら、毒づく。

聞けば聞く程に哀れな話である。
母子家庭も同然ながら、大切に慈しみ育てた我が子が孫共々失踪してしまったのだ。
だが、一縷の望みで頼った孫たちの学校で、聞く耳さえ疑う様な衝撃の事実を知らされてしまった哀れな祖母。

しかし、その当の張本人、級友どころか、その母親さえ巻き込み、生活どころか全てを奪い去り、人生すら
変えてしまった2人は、それを気に病むどころか、驚くべき事にむしろワクワクするほどの感覚を
覚えていたのだ。

「うふふふ、、ヤッちゃぉっかぁ、、、、」
「ふふふふ、、ヤッちゃぅぅっ、、、、、」
期せずして目が合った2人の美少女は、ほぼ同時に声を発した。

その瞬間、美貌のキャリアエリートにしてセレブ未亡人、西川真佐美の運命は決定してしまったのだ、、、、、



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