05-02


「ママ、、、うぅん、、お、、お母さん、、、ホントに、、、、ホントに、、、、」
「あらあら、改まってなによ、、、、ほら、、泣かないの、、、もぅ、、美里の夢だったんでしょ。」
某国際空港の雑踏の中、感極まって泣き出す娘を優しく嗜める母親。

「、、、だ、、って、、、、、私、、、お母さん達を、、変に疑って、、仲間はずれみたいに感じて、、、う、うぇ〜〜んっ、、」
「ほら、、そんな泣き虫じゃ、向こうに行ったって何にも出来ないわよぉ、泣かないの、、、笑って、、美里。」
しかし、未熟な自分を恥じ入るばかりの美里はとても泣き止みそうにない。

まぁ、それもある意味当然なのかもしれない。
母と息子で、自分に何か隠し事をしている。と、勘ぐっていた美里に、あの日告げられたのは、何とこの米国への留学決定の連絡であったのだ。
そう、将来への期待に満ち溢れる夢大き女子高生は国際社会での活躍を夢見つつも、母子家庭である自身の現実との狭間の中、微かな望みを
掛け、公費による海外短期留学へ応募していたのである。

勿論、そんな希望が叶うなど、まさに針の穴でも通す様な微かな可能性でしかなく、全く期待していなかった美里なのだが、
なんと、あの日、母である美咲からそれを告げられた美里は、まさに天にも昇るかの様な気持ちとなってしまった。

しかし、もちろん、如何に公費留学とはいえ、決して裕福ではない自分の家庭で、果たしてそれが可能なのであろうか?
一時の興奮から覚めた美里は恐る恐る美咲に問うのだが、多少苦しくはなるものの、『安心しなさいっ』の美里の頼もしい言葉。

だが、勿論、具体的には仕事でのパートの時間は多少増やすしかなく、それに伴ってそれらが可能かどうか、そして何よりも、
そうなるコトを、未だ小学生である末っ子の二郎がそれをどう感じるかの判断が美里には必要であったのだ。

そう、、、、あの少しの間感じられていた、あの母と息子、2人だけの妙な雰囲気はこれを隠していたからだったのだ。
それをバカな自分は何という小さな事にこだわってしまったのであろうか、、、、、、、

その間にも母は経済的にパートの心配をし、あんな小さな二郎ですら一人の時間が増えるのを姉の為である。と納得してくれたのに、、、
それなのに、、、、あまりの自分の小ささに涙を堪えきれぬ美里。 
「うぇ〜〜ん、、、お、おかあさん、、、、あ、、ありがとぅ、、、ホントに、、、ありがとぅぅ、、、、」
「うふ、そうしてるといつまでもまだ子供ね、、、でも、、ほら、、、そろそろ時間よ、、、さぁ、、泣き止んで、、、しっかりしなきゃっ!!」
「、、、、う、、、う、、ん、、、、、は、、は、ぃ、、、、はぃっ!!」

やがて、ひとしきり泣いた事でようやく気持ちの整理が着いたのか、ウソの様に晴れやかな笑顔を取り戻した美里は、母譲りの凛とした
雰囲気を纏いながら、颯爽と夢への入口である異国に向かう道を、胸を張って向かっていった。

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