02-01

やがて、一行を乗せた社用車は社長の自宅に到着した。
そこはさすがに芸能プロダクションの社長自宅とあって、それなりの豪邸である。

しかし、そこで事態は意外な展開を示す。
なんと、自宅玄関前に車を止めた後、仲介の男だけが運転席へと代わりそのまま車を運転して立ち去り、
後には社長はじめ春美と薫の3人だけが残されたのである。

そして、事態の展開を飲み込めないで当惑するしかない春美の後ろに回った社長は、その両肩に手を当てると、
傍らの薫に向け、トンでもない事を言い始めたのである。

「ふぅっ、さって、今までちゃんと紹介も説明も出来なくてごめんなさいね、薫ちゃん。
 この子は名前は『ソラ・ルミ』ちゃん。今度、ウチからデビューする事になった女の子で、
 日本語ペラペラだけど、実は東南アジアの○○産まれの外国人なのよ。」
『!?、、、!!??、、、な、、、な、に、、、、何言ってるの!?、、、、』

あまりにも突然な社長の口から漏れたトンでも話に呆然とする春美。
だが、その間にもペラペラと社長の説明は続いて行く。

曰く、日本のアイドルに憧れ、どうしてもアイドルになりたくて単身来日してきた、若干1*歳の女の子である。
しかし、生憎未だ未成年であるからして、来日の際の身元引受人である社長宅に滞在する事となった。

『いったい、、いったい、どう言う事なの、、、』
あまりのトンでも話に、背後の社長を詰問するべく、後ろを振り向こうとした春美であったが、それに先じて
身を屈めた社長が、春美の耳元で囁いた。

『うふ、驚かせてごめんなさい、ちょっとしたドッキリよ、ドッキリ、せっかく春美が化けたんですもの、
 ちょっと薫ちゃんを驚かしてみようと思ったの、、、、』
、、、、、冷静に考えれば、これもまたかなり無理のある説明ではあった。

だが、、、これまでデビューも含め、まさに10年以上もの間、公私に渡って自分たち母子の面倒を
見てくれた社長に対して、春美の寄せている信頼は、文字どおり全幅と言っても良いものであり、まさかにも
そこに邪まな考えがあるなどとは、まさに夢にも思えなかった春美なのである。

そして、そんな春美の心の透き間を狙うかの様に、更にその耳元で囁く社長の声。
『ほら、薫ちゃんを見て、いきなりこんな美少女(?)と同居だなんて言われて、凄い嬉しそうよ。』
その言葉に思わず、目の前にいる薫を見ると、確かに薫は妙にもじもじ、そわそわとかなり落ち着かぬ様子だ。

まぁ、確かにそれもそうであろう、、、社長の言う設定(?)を鵜呑みにすれば、いきなり訪れた美少女との
突然に始まる同居生活、、まさにおタクな妄想が爆発した恋愛ゲーム(エロゲー?)そのもの設定ではないか。

思春期の入り口に立ち始め、女性への興味が激しさを増す年頃の少年にとって、まさに夢の様な環境である。
そして、そんな社長のトンでもな提案に、なぜだか思わず春美までふとつい興味を示してしまったのだ。

そう、それは、日頃、芸能活動の忙しさのあまり、母子のコミニケーションが足りて無いのではないかと、
やや自覚していた春美の負い目のせいであったのかもしれない。
それが、この妙なイベント(?)で些かでもそれが埋められればと思ってしまった春美のあまりに浅はかな
考えなのであり、それがまさに取り返しのつかぬ結果となるのだが、もはや流れは決してしまった様である。。

『そ、う?、確かに、そ、それも、ちょっと面白いかもしれないわね、最近、薫とあまりお話出来てないし
 遊び、、よね、、、そう、、お遊び、、、、、』
そう自分に懸命に言い聞かせ、無理やり自分を納得させようとしている春美。

そして、そんな春美の内心の声が聞こえでもしたのか、社長が2人にこう告げたのであった。

「あっ、じゃぁ、薫ちゃんはこの家、よく泊まりに来て知っているから、ルミちゃんを案内してくれるかしら、 ルミちゃんは薫ちゃんに、何か判らない事があったらすぐに尋ねてね。」
そんな社長のお言葉に、まさに顔を輝かせてしまった薫は、母である春美すら知らぬ一面を見せてしまう。
「う、、うんっ、ボクが案内してあげるよ、、ねぇっ、まずはこっちからっ!!」
なんと突然に、春美、いやルミの手を握り、まさに走りださんばかりの勢いで廷内に向かって行くのだった。

そして、そんな2人の後ろ姿を見つめる社長の瞳には、妖しい輝きが浮かぶのであった。



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