01-03

まさに恥を忍んで我が年も顧みずのロリスタイルでデート(?)に挑んだものの、結果としてそれはやや
拍子抜けするほどに単純なものであった。遊園地やら食事、ゲーセンにプリクラ、、、、、、
幸い、一児の母である春美にとり、ゲーセンやプリクラもじつに慣れたものであり、小柄な春美はメイクと
その声のせいもあり、周囲からは全く違和感無く受け止められていた様であった。

ただ一点だけを除いては、、、、、
『ねぇ、お兄ちゃん、春美、今度はこれがイィなぁ、、』
、、、、、、そうなのである、、、、いかなる趣味の持ち主か、はたまた昨今流行の恋愛ゲームの信奉者か、
なんと、単に春美を中学生扱いでデートするのではなく『兄、妹』の疑似プレイ(?)がご所望であったのだ。

さすがに、初対面でそれを聞かされた時は、正直ドン引きせずにはいられぬ春美であった。
しかし、今更、こんな格好をしてまで来て、何を躊躇う事が出来よう、、、、
まさに『毒を食らわば皿まで』(?)と言った心境で開き直った春美は、ただこの後の栄光を信じ、
珍妙な恋愛ゲームもどきを演じ続けていた。

そんな疑似デートもどうやら終盤の様である。
時刻も既に夕方であり、場所は遊園地の出口、そして、これが終われば栄光への入り口が待ってる(?)と
ばかりに、ややハィになって演じる春美。

「ねぇ、お兄ちゃん、春美、今日はとぉっ〜〜ても楽しかったよぉっ!!」
「春美、またここへ遊びに来たいなぁっ!!」
と、まさに恋愛ゲームの妹キャラになりきったかの如き演技を続けてた春美であったが、そんなカップル(?)を
見つめる人影があったのには気付かなかった。

そして、遊園地外の駐車場に着いた2人。

見慣れた社用車のワゴンの傍らに佇む紀子に気付いた春美は、さすがにこのバカバカしい演技を一刻も早く
終了させたかったのであるが、あいにく周囲は同じ様に閉園間近の退場者が大勢おり、そんな中でたった今、
『お兄ちゃん』の妹キャラを演じていたにも拘らず、それをあっさりと終了させるのはさすがに多少は
気が引けてしまい、今しばらくはこの『妹キャラ』を演じ続ける覚悟を決める。

「あっ、社長さん、お疲れさまですぅっ!!」
「はぃ、『お兄ちゃん』とのデート、どう、楽しかった?」
「うんっ、とぉ〜〜っても楽しかったぁっ!!『お兄ちゃん』優しいしぃ、格好良いしぃ、大好きぃっ!!」
作ったアニメ声で完璧(?)な妹キャラを演じる春美に、周囲にいる、いわゆる大きなお友達らしき存在の
羨望の眼差しが、美少女(?)へと向けられる。

そして、その2人を暖かい目(?)で見つめていた社長が次の瞬間、トンでもない台詞を口にしたのだ。
「そぉねぇ、実は心配で途中の様子、私達も見ていたけど、ホント、楽しそうだったわ、、ね、、薫。」

『?、、、??、、、!?!?、、、!!!! え、、、か、かおる、、、って、、えぇっ、、えぇっ!!!』
そう、、、、社長の傍らのワゴンの社用車、そこからちょこんと飛び降りて来た小柄な少年が一人。
それこそ、母である春美が見間違える筈もない、誰よりも愛しい一人息子の薫、その人であった。

思わず社長の顔を見直す春美。
それもそうであろう、確かに改めて、今日の仕事の内容(?)を薫に秘密にすると約束した訳ではないが、
今の姿を息子に見られて、母親である自分が嬉しい筈が無いではないか。
『い、いったぃ、、いったい、どういう事なんですか、、、、なんで、、、なんで、、薫が、この場に、、』

社長の意図が見えず、ひたすら引きつった笑顔のまま硬直してしまう春美である。
そして、そんな春美を尻目に、にこやかな(?)笑顔のまま、春美の傍らにいる男性にも同意を求める社長。
「えぇ、今日はこの子、ウチの歌手のお子さん、薫ちゃんって言うんですけど、この子と一緒に時々
 デートの様子、見させて戴いてたんです、ですから、、、」

社長の言葉は続いているが、混乱しきっている春美の脳裏は解答を求め、苦心惨憺である。
そして、なによりも自分をチラチラと見つめる薫の瞳が、春美を混乱させていく。

どうやら、薫は目の前の美少女(?)がまさかにも自分の母親であろうとは、気付いていない様である。
それもそうであろう、普段の春美は演歌歌手の嗜み(?)としてなるべく和装でいる様にし、髪の毛も
緑の黒髪を結い上げ、肌理細かい純白の素肌をほとんど日の目に晒さぬ様なファッションが基本なのだ。

まさかにも目の前の茶パツでロン毛をツインテールに纏めた褐色で、しなやかな手足もほとんど剥き出しな
黒縁メガネ美少女が母親である等、気付くはずも無いではないか。

だが、そんな春美を更に困惑させる台詞が社長から聞こえて来た。
「えっ!?、プリクラも撮ったんですか、あっ、見せて見せて、うっわぁっ!!、可愛いわぁっ!!」
『!?、えっ!?、あぁっ、や、やめて、、そんなもの見せないで、それは、、それは、、、』
突然の『プリクラ』の単語に慌てて、傍らの男を制止し様とする春美であったが、一瞬遅くそれは社長の手に
渡ってしまった。

そう、、それは、先程までの疑似デートも終盤、ついハイになってしまった春美が誘われるまま撮影して
しまった男とのプリクラならでは、恥ずかしい『ツーショット』写真の数々であったのだ。
ぺったりと寄り添い、、どころではない、、、顔と顔まで密着させてしまった写真を始め、とても母としては
息子に見せられぬ写真の数々。

「ほんと、良く撮れてるわね、、、、うふ、それじゃぁ、そろそろおウチに帰りましょうか。」
そう言いながら、傍らの車を示す社長に促されるまま、乗り込む一行であった。

そして、帰路に着いた車中でも春美は困惑の度を深めるしかなかった。
運転席には社長が座り、その横の助手席には薫、そして後部には自分と仲介者である男が座っている。
なによりも、男と社長の会話があくまでも春美を『妹』扱いにし続けているのである。

更に、どうやら、先程までの遊園地での疑似デートは、ほとんど目撃されていた様であったのだ。
『あんなに仲良く手を繋いで、、、、、、』『お食事の時も、、、』『同じストローで、、、、』
そんな会話をされる度に、まさかにも、今、自分が助手席に座る薫の母親であると正体を明かせずにいる春美。
そして、会話を振られる度に、必要最低限ではあるものの、どうしてもあいかわらず『ロリエロ』な『妹』を
演じ続けねばならぬ春美である。

『い、言えない、、今更、自分が春美だなんて、、言えるわけなわ、、、、』
特に、助手席に座る薫が何か物言いたげに、チラチラと後ろを振り向いているのに気付いた春美は、
そんな『妹』の演技を続けながら、ひたすら目的地である社長の自宅へと早く着くのを祈るだけであった。

そこで待つものが何かも知らず、、、、、、



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