6-1 終わりの始まり
「、、、事長、、、理事長先生、、、、あ、、あの、、理事長、、、、」
「!?、、あ、あらっ!?、、ご、ごめんなさい、、ちょっと考え事していて、、えっと、、そぉそぉ、、、」
自分の報告にも生返事だけしか返さぬ理事長に、不審に思った教師が改めて真佐美を見ると、真佐美は
どこか上の空な感じであらぬ方向をただ、ぼんやりと見ているだけであった。
そのあまりの不自然さに、声をかけると慌てて自分に向き直り、会話は正常に戻るのだが、なにか
違和感を感じながらも報告後、理事長室を後にする教師であった。
だが、実はそれはその教師一人だけの感想では無かったのだ。
そう、、最近の学園内での話題はたった一つに集中していた。
それは教師たち同士だけではない、当然生徒たちのあいだでも急速に関心は高まりつつあった。
曰く
『理事長先生は最近、ヘンじゃね!?』
状態についてであった。
しかし、噂をしているグループによって、その解釈はかなり差がある様である。
最も辛辣なのは女性教師達からであるのは言うまでもない。
曰く。
『話しかけてもぼぉっとしている事が多い。』
『会議中でも上の空。』
『終了時刻ですぐ帰宅。』
『出張での休みが増えた。』
『以前はマメに土曜日も学校で様々な事をしていたが、最近は全くこない。』
等など、表立って批判や非難等などには未だ至らないのだが、あまり好意的には捉えていない集団である。
そして、それと対称に好意的なのは生徒たち、それも男女を問わずのある一部のグループ。
いわゆる勉強よりもどちらかと言えば、男女間のアレやナニに関心が集中してしまうと言う、まぁ、
見方を代えればもっとも高校生らしいと言える集団。
曰く。
『ねぇねぇ、ナンカ最近、理事長先生、スッゴク奇麗になって来たと思わない。』
『うん、思ぅ、お肌とかさぁ、、なんか艶々してるしさぁ、、』
『最近、よく部活とか見学に来るけどさぁ、こないだなんかスッゲェ近くに来られたら良い匂いでさぁ、、』
『バッカ、俺なんか素振りの時、いきなり『ここはこぅすれば、』とか背中にピッタリ身体密着させられて』
等など、、、、
そして、戸惑いつつも好意的(?)な解釈は年齢を問わずの男性教員達。
これまでは毅然とした印象がまず始めにあった上司の鏡の様な存在が、最近はどうにも勝手が違うのだ。
媚びるとまではいかぬのだが、どうにも言動の端々にこちらの様子を伺う感じが見て取れる
具体的には、例えば、
『あの、**先生、ここの件なのですが、、、、』
『あぁ、やっぱり男性は違うわねぇ、、』
丁寧さよりも、なにやらヘリ下る寸前の様な、、、、、、、
しかも、それらの台詞を密着させてこそしないが、ほぼそれ寸前にまで身体を近付けて言われてしまうのだ。
若い教師の中には、それだけでなにやら身体の一部をモッコリさせてしまうものまで出る始末。
だが、そんな周囲の喧噪をよそに、今日も規則正しい定刻退社(?)をする真佐美は輝く様な笑顔で
あいさつをしながらも、足取りも軽やかに学園を後にするのだった。
「あっ、それでは皆さん、お先に失礼致しますね。あっ、**先生、さようなら。」
そして、たまたまドアの所ですれ違う事になった男性教師にも、丁寧にあいさつをする真佐美。
すると、何事か思い出したのか、真っ赤になったその若い教師は口ごもりながらもあいさつを返し、
そんな様を内心は色々と違いがあるのだが、表面的には平静を装いながら見送る教師たちであった。
そして、学園を後にした真佐美は、もはや欠かさぬ日課にまでなってしまった超高級エステへ直行していた。
そこではエステだけでなく、ジムまで併設されておりそこでのリフレッシュは最早、真佐美にとって
無くてはならぬものにまでなっていた。
メンタルヘルスケアまで習得しているであろう、エステシャンやジムのトレーナー達との会話を楽しみつつ、
心身共にリラックスした真佐美はジム内のスタジオでのエクササイズやプールでのスイミングも欠かさない。
そんなエクササイズも、最初は野暮ったいスェットもどきで参加していたのだが、最近はなにが自信が
着いたのかは判らぬが、さすがに食い込みレオタードまでは着ないものの、セパレートタイプのタンクトップと
レギンスのみで大きく素肌を晒し、豊かな乳房の谷間を大きく露出させ、更にそれを見事なまでに弾ませて
運動しているのだ。
更にはエステと併設されているジムのプールでも、純白のワンピースで軽やかに泳ぎつつ、最近の自分の
身体の軽さに喜びを感じずにはいられない真佐美であった。
そんな自分へエステ内部やスタジオ、はたまたここ、プールででも注がれて来る様々な視線、そして小さく
聞こえて来るヒソヒソ話。
『ねぇねぇ、あそこのあの人、、、いくつか知ってる?』
『えぇっ!?えぇーーっとぉ、、そぉねぇ、、30〜5、6歳位じゃない?だいたいだけど、、、』
『それがねぇ、、、、ゴニョゴニョ、、、』
『!?、!!!!、ウッソッ、エェーッ!!だって、、、エェーーッッ!!!!』
もちろん、プライバシーと言うか個人情報は、昨今の個人情報保護の流れから、あえて言わぬ限り知られる
筈もないし、もちろん、年齢に至ってはこの様なところに来る女性陣にとって、最大のタブーであろう。
だが、そこはやはりエステもジムも資本主義での営利組織。
まさに歩くアンチエイジングの見本の様な真佐美を利用(?)しないわけが無い。
『ここだけの話ですけど、こちらのコースを利用なさっている方は5*歳ですが、、、、』
『こう言ったものを使用している5*歳過ぎのお方も、、、、』
そんな具合いでの説明と共に、さすがに実名や写真までは出せぬが、そういった職員がチラッとばかりに
その際に近辺に居た真佐美を見れば、もはやそれだけでそれが誰を指して居るか判らぬ訳が無い。
そんな事の結果、今や真佐美は注目の的となってしまっていた。
それはもちろん、羨望と驚嘆、そして賛美、、、、、、、、
中にはわざとらしくスタジオでのエクササイズの時、もしくはプールででも隣りに立ったり、すれ違ったり
しながら通り過ぎ様にさりげなくチラ見してチェックする者までいる
そして間近で目の当たりにした、その素肌の尋常ではない見事なまでの水の弾きっぷり、、、、、、
小じわどころかシミ、、、いや、クスミすらかけらも見られぬ輝く様な美肌っぷりに打ちのめされるのだ。
そんな周囲の雰囲気に真佐美の『女』は弥が上にも刺激されずにはいられない、、、、、、
もちろん、そこだけは年齢相応の分別を発揮して、表立っては表さぬのだが、その内心に沸き上がる
優越感はもはや抑えようが無かった、、、、、、、
そうして、満面の笑みを浮かべながらロッカールームに戻った真佐美は携帯に表示されているメール着信に
気付くと、年甲斐もなくポッとばかりに頬を染めてしまう。
『うふふ、、しょうがないわねぇ、、、、もぉ、、、ホント、我慢出来ないんだからぁ、、、』
そう、、それはあの少年からのおねだりメールであったのだ。
あの久々に関係を持ってしまった日の別れ際、意を決して真佐美の問いかける少年に与えた回答。
『、、あ、、、あ、の、、、こ、これからも、、時々でいいから、、あ、会ってもらえますか、、、』
『、、、そ、そぉねぇ、、で、でも、、毎日なんか、は、、絶対ダメよ、、、ち、ちょっと、、待ってね、、』
先程まで、まさに獣の様な逞しさと無限の精力で自分を激しく貫く犯していた人物とは、とても同じ人間に
思えぬ程の気弱さで、訴える様な問いかけをしてくる少年のその姿に、母性本能をくすぐられた真佐美は
思わず即答をしてしまいそうになるが、そこはそれ、辛うじての教師の矜持(?)でそれを思い止どまって、
思案を巡らせる。
『そ、そうね、、じ、じゃぁ、こうしましょう、、、、、』
ほんの先程までの激しすぎる交わりで、未だよく回らぬ頭を懸命に駆使してなんとかそれらしい結論を
提案する真佐美。
曰く、、、、
・どうしても、我慢出来なくなったらメールで連絡する事。
・それでも、メールは一日一回のみ、それも毎日等は絶対送らない事。
・そして、私の都合の良い時だけ、返信メールで日時と場所を指定してメールを送ります。
と言う、実に自分に都合の良い内容を一方的に告げたのであった。
そして、止めとばかりに、
『イヤならこれでお仕舞いよ。』
と告げると、ようやくにも解放出来た性衝動のあまりの甘美さに、それを失いたくない少年は、まさに
首振り扇風機の如くの意を示し、あっさりとそんな条件を承諾してしまう。
それからと言うものの、毎日なんか絶対ダメと最初にクギをさしておいたら、律義に1日置きに入る様に
なってしまった、『もぅ、我慢出来ません』の泣き言メールに苦笑しつつも、いつしかそれを待つように
なってしまっていた真佐美であった。
もちろん、理性の片隅では、『こんな筈じゃない。』『こんなコトを続けていてはダメ』と浮かばぬ訳も
ないのであるが、そう思いながらも少年との淫行を続けてしまう真佐美。
だが、辛うじて少年からの『我慢出来ません』の泣き言メールに対して、あくまで
『しょうがない、サせて上げる』の形を維持する事だけが、自分の正当性(?)であると懸命に
自分に言い聞かせている。
しかし、『しようがない』と言いながらも、少年に日時の連絡メールを作成している真佐美の顔には、
もはや隠す事の出来ない位の笑みが浮かんでいる。
そう、それは間違いなく、無限の精力で自分を愛してくれる若々しい少年との、あの目も眩む様に凄まじい
肉欲の快楽を反芻している『女』そのものの顔である事に、ただ、真佐美自身だけが気付いていなかった。
そんな真佐美の変貌にやはり、一番敏感なのは女子高生である生徒達、、、それも早々と『少女』から『女』に
なっている者達であるのは言う間でも無い。
以前に理事長室に頻繁に訪れていた少女たち、そう、、どちらかと言えば『知性派』の少女たちに代わり、
今はすっかり真佐美の中に敏感に『女』を嗅ぎ付けた少女たちが訪れ、様々な歓談をしていた。
そんな話の内容も勉学や進路より、『色恋』『ファッション』『メイク』一辺倒なのは当然であり、
さすがにあくまでも、会話の間はあいまいな同意や肯定で応じていた真佐美も、いつしか休日等に
足しげくブティックにまで通う様になってしまっていた。
もちろん、店員達が露骨な表現などする訳もない。
おきまりの
『とっても良くお似合いです、、、』
『えぇーーーっ!?、お若いですわぁっ、、、』
『少し、これくらい大胆な方が、、、、、』
それらの定型文に満更でもない笑みさえ浮かべる様になってしまった真佐美は、いまや、
『ホントに素敵です、、奥様、、、』の言葉に対して、
『あらヤダ、わたし、、独身ですのよ、、、今は、、、』
と答えてしまった時の目は笑っていなかったのだ、、、、、、
もはや、間近に迫っている破滅の時に、気付かずにいた真佐美の幸せな(?)一時であった、、、、、、
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