タイトル[さみしいクリスマス]

 クリスマスが近づくと菊代はある思い出に浸ることがある。それは菊代がまだ20代の頃だ。
この頃になると男性と過ごすよりも女性と過ごすことが多くなり、その夜も自分が囲っていた愛人と共に過ごすはずだった。
当時愛人となっていた女性はレズバーで拾ってきた19歳の少女で菊代に奴隷と仕えることを前提に同居していたのだ。
菊代はその少女に屈辱的な陵辱を毎日のようにしていた。

窓やドアを開放した部屋で全裸ですごさせることなどは当たり前で、
乳房や尻がはれるまで鞭で打ちのめしたりするかと思うと男性がするように少女を愛撫することもした。
菊代は少女を愛していた。この子となら養子縁組してレズ夫婦になってもいいと考えた。

 その夜はクリスマスイブだった。
菊代はなけなしの金で少女にプラチナの指輪とかねてからSMショップにオーダーしていた首輪を買った。
首輪は赤い革製で金糸で「神田専用」と刺繍がしてあった。菊代はプロポーズするつもりだったのだ。
それは少女に永遠の忠誠を従わせるものだった…。

「私の可愛い子猫ちゃん…コレであなたは永久に飼われるのよ…楽しみだわ」
 しかし、菊代が家に帰ると家の様子がいつもと違うことに気が付いた。
明かりをつけて部屋を見ると家の中が散らかっており、家中の家具の扉や引き出しが開いたままになっていた。
「え?!ど、泥棒?!」
菊代は部屋中を調べてみた。すると金目のものというものが全てなくなっていた。

「そういえばあの子は?」
菊代が帰ってきたときには少女はいなかった。あたりを探してみたが見つからなかった。
それどころか少女の荷物も無くなっていた。菊代はようやく少女が金目のものを盗んで逃げ出したことに気が付いた。
警察に被害届を出したが結局捕まらなかった。
菊代はたった一人になった部屋であげる筈だったプレゼントを抱え涙を流し呆然とする日を過ごした。

「愛していたのに…」
この頃の菊代はまだ純粋なところがあった。
 今年、春川邸にかおると暮らそうと荷物を片付けている時にそのプレゼントを見つけた。
指輪は返品できたが、首輪はそのままとっておいたのだ。箱を開けて菊代はちょっと思い出に浸った。
この首輪を香るにつけてもいいかなと考えたが、また箱に閉まった。
だってかおる達は「学園共有」であって「神田専用」じゃないから。



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